パンの用語集

パンの用語

窯伸び オーブンで焼成する初期段階で、生地が急速に膨らみパンのボリュームが大きくなること。オーブン・スプリングともいいます。
クープ 窯入れの直前に、生地の表面にナイフを入れる切り目のこと。切り目を入れることで、表面にできる亀裂が整って見た目がよくなるとともに、火の通りもよくなり、ボリュームが出ます。また、バゲットなどのように切れ目が広がり、模様になるので外観もよくなります。
クラスト 皮、表皮ともいい、パンの外側の硬くて焼き色がついた部分。食パンならば、「耳」と呼ばれる部分がクラストにあたります。焼きたてのパンの香りにも関係しています。
クラム 内相ともいい、パンの中身のこと。外皮の内側にある軟らかい部分。このクラムの気泡は、製パン工程で左右されます。
すだち パンをスライスした断面に見える気泡の跡。クラムの気泡構造を表しています。気泡の大きさ、形、分布状態など、パンの種類により「すだちがよい」状態は異なります。
リッチ

パンのタイプを表現するときに使う言葉で、パンの材料にバター、砂糖、卵、乳製品などを多く配合して作ったパン。クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュ・ペストリーなどがあり、このようなパンをリッチなパンといいます。⇔ リーンなパン

リーン

パンの材料がシンプルなこと。粉、パン酵母、塩、水を混ぜ合わせたバゲットもしくはライ麦パンなどをさします。このようなパンをリーンなパンといいます。⇔ リッチなパン

ハード クラストがバリバリとした硬い食感のあるバゲットのようなパンをハード系といいます。一般にリーンなタイプのパンはハード系です。
ソフト 口溶けが良く、ソフトな食感のパン。砂糖、バターなどが多く配合されたリッチ系のパンになります。
火膨れ(なし肌) 冷凍あるいは冷蔵障害を受けた生地を焼成した際に、パン表面に気泡の膜が焼けて斑点のように見える現象。長時間低温で発酵させた生地(バゲット)の表面にも火膨れが見えます。
老化 焼き上がったパンが時間が経つにつれて、パサついて硬くもろくなる現象。一般的に、油脂や砂糖などを多く配合したパン、中種法のパンは老化が遅い傾向です。また、冷蔵庫の温度帯(5℃ 前後)で最大に老化が進むため、パンを保存する場合は冷凍保存をおすすめします。老化するとパンの風味・味が低下するため、食べる際にはトースターなどで焼き戻すことで、でんぷんは再糊化して食感・風味など良くなります。
ホワイトライン 食パン(角食パン、プルマンブレッド)の上部の角の白いラインのこと。パンの上の角が若干丸く、5mm程度のホワイトラインがある食パンが品質として良いと言われています。製パン工程で発酵条件・時間が関係しています。
ルヴァン フランス語でLevain(ルヴァン)は「発酵種」という意味。主に小麦粉やライ麦粉、 りんご、ぶどうなどを水で混ぜてつくります。ルヴァン(発酵種)を用いたパンを「パン・オ・ルヴァン」と呼ばれます。
ケービング
(腰折れ)
焼成後のパンの側面が内側にへこんでいる状態。腰折れともいいます。これは、パン生地の発酵状態、あるいは焼成温度・時間などの状況などさまざまな原因があります。腰折れしない方法として、焼成後型に入ったまま高い位置から落とすなどして衝撃(ショック)を与えることが有効とされています。
こし 生地の弾力のこと。生地に弾力があることを「腰が強い」といいます。生地を分割して、丸めの力加減によって弾力(腰)が変わります。高さがあるパンを「腰高のパン」という表現を使います。
しまる⇄ダレる 生地の弾力性が高まった状態のことを「生地がしまる」といい、パンチ、丸め、成形など、生地に外から力を加えることで弾性が強くなります。逆に、生地の弾力性が弱まっていることを「生地がダレる(緩む)」といいます。
ベーカーズ
パーセント
通常レシピの材料はグラム単位を使いますが、パンの場合は、配合中の粉の重量を100%とします。そして、粉以外の材料は粉に対する割合(%)で示すのが一般的です。
ppm “parts per million”の頭文字をとったもので、100万分の1のことをピーピーエムといいます。製パンにおいては、ビタミンCなど使用量がごく微量なものに使われます。1ppm = 0.0001%
吸水率 生地を仕込む際に、粉に対する水量の割合(%)。粉の種類・質、さらには捏ね方や生地温度によって吸水量が大きく異なります。
捏上温度 ミキシング(捏ね上げ)直後の生地の温度。生地の温度は、発酵の工程に大きく影響するため、パン酵母が最も活動しやすい温度にする必要があります。パンの種類や製法によって変わりますが、標準的な捏上温度は27~28℃です。目標の捏上温度にするために、材料を冷やしたり、ミキサーボールの周りを氷水で冷やすなどして生地温度を調整する場合もあります。
焼減率 焼成ロスともいい、パン生地重量が焼成中に減少する割合(%)。焼成前の生地重量と焼成後のパン重量との差を、焼成前の生地重量で割って算出します。パンの焼成を判断する目安になり、パンの種類によって理想値があります。例えば、角食パンの焼減率は10~11%です。

製パン法

中種法
(なかだねほう)
ふわふわ感が持続して、香りと風味が楽しめる
発酵種の一つ。生地を作る前段階で、材料中の小麦粉、水、パン酵母を捏ねて約3~4時間発酵させたもの(中種)を残りの材料とミキシングしてつくる製法です。きめ細かくボリュームのあるパンに焼き上がります。また、中種として発酵させているため、香り、風味が豊かになります。
中種法はストレート法より時間と手間がかかりますが、老化も遅くソフトな食感があるため、大量生産するパンエ場での食パンや菓子パンで利用されています。
※工程
中種ミキシング→中種の発酵4時間→生地ミキシング(本捏)→ 第一次発酵(フロアータイム)→分割・丸め→ベンチタイム→成形→最終発酵(ホイロまたは第二次発酵)→焼成
ストレート法=
直捏法
(じかごねほう)
材料を一度に混ぜる方法でもっちりした食感
すべての材料を一度にミキシングする製法。作業工程が少なく、最も基本的な製法です。小麦の風味を生かし、弾力がありもっちりとした噛み応えのある食感になります。原材料の個性がパンに表れやすいですが、中種法で作ったパンに比べて老化しやすいという点があります。そのため、家庭での手ごね製パン、手作り生産のリテイルベーカリーではこの製法を用いることがほとんどです。標準ストレート法、直捏法(じかごねほう)ともいいます。
※工程
ミキシング→第一次発酵2時間(途中でバンチ)→ 分割・丸め→ベンチタイム→ 成形→ 最終発酵→焼成
冷蔵中種法
(オーバーナイト中種法)
製パンのおいしさと合理化を考えた製法
中種法の一種。前日につくった中種を一晩かけて冷蔵庫で低温発酵させ、当日の製パン作業を本捏から開始する方法です。生地が冷却されているので、パン酵母の活動が低下しているので安定性が高いです。また、パンの香りや酸味がマイルドになる特徴があります。
ノータイム法 発酵時間の短縮でつくる製法
ストレート法の一種。製パンにかける時間を大幅に短縮するために、発酵時間を0~30分にした製パン法です。ストレート法に比べると、クラムのきめが細かく軽くソフトな食感になります。しかし、発酵時間が少ないので発酵による香りや風味が乏しく、原材料臭が強くなります。
加糖中種法 菓子パンづくりでポピュラーな製法
中種法の一種。砂糖の一部を中種に加えて発酵させる製法。砂糖の配合が多い日本の菓子パンに多く用いられる。使用する砂糖全量の約5%を中種に配合するのが一般的。砂糖の配合量が20~30%(小麦粉に対して)と多い菓子パン生地では発酵時間がかかる傾向にあります。
小麦粉液種法
(ポーリッシュ法)
水分の多い種で、発酵の風味をプラス
発酵種に同量の粉と水を加えポーリッシュ種を作ってから、残りの材料をミキシングする製法。この製法はポーランドから伝わったため、ポーリッシュ法と呼ばれています。昔、パン酵母が普及する前に主流だった製法で、水分が多いポーリッシュ種は酵母力を高め、バゲットなどハード系のパンに用いられていました。ポーリッシュ種には中種に似た効果があり、パンの食感を軽くしたり、発酵臭が強くなる特徴があります。
湯種法
(ゆだねほう)
小麦粉の一部を熟湯で捏ねて、でんぶんを糊化させたもの。これをパン生地に加えることによって、通常のパン以上にでんぷん糊化度を高めるため、パンがしっとり、もっちりとした食感、そして甘みが高まるなどの特徴があります。湯捏法あるいはα-種法ともいいます。
発酵種
(はっこうだね)
生地を作る前段階で、材料中の一部を使って発酵種を作り、それを残りの材料とミキシングして生地を仕上げる製法の総称。発酵種を作るのに手間はかかりますが、ストレート法に比べ、発酵種によるさまざまな特徴が、生地とパンに反映されます。
天然酵母という言い方がポピュラーですが、独自で種を起こした発酵種を自家製酵母種といいます。
サワー種
(サワーだね)
生地を作る前段階で、酵母・乳酸菌を豊富に含んだ初種を起こし、それをもとに生地を作る方法。発酵種法と同義語。サワー種という言葉は、英語のSour dough(サワードウ)からきています。サワー種は乳酸菌の活性が高いため、サワー種で作るパンは、酸味と独特の風味があります。一般に、ヨーロッパではサワー種を使ったパンが多いです。
初種 サワー種に有効な酵母、乳酸菌などを増殖させたもの。起こし種、元種、スターターともいいます。
種起こし 生地を作る前段階で、製パンに有効な酵母、乳酸菌などを培養して発酵種を作ること。温度管理などが重要なので、経験が必要とされ、手間がかかります。
種継ぎ 古くなった発酵種(パン種)に小麦粉・水・塩などを加えて、酵母が活動できる状態にして培養すること。

パンの基本となるのが「粉」です。パンに多く使われる小麦粉は、タンパク質に水分を加えるとグルテンになり、生地を膨らませます。

超強力粉 超強力粉は強力粉と比較して、ただ単にたんぱく質含有量が多いというわけではなく、たんぱく質の質が異なります。超強力粉で形成されるグルテンは極めて強靭なものになります。
強力粉 小麦粉の中でもたんぱく質含有量が多く、バンの材料としては最も一般的です。
フランスパン用粉(=準強力粉) 強力粉よりもたんぱく質含有量が少なめで、フランスパンなどの欧風パンに適した小麦粉。カリッと香ばしく、軽い食感になります。
中力粉 たんぱく質含有量が9%前後の小麦粉です。うどんなどの麺用粉として使われているため、地粉(じごな)、うどん粉ともいいます。
薄力粉 小麦粉の中でたんぱく質含有量がもっとも少ないため、スポンジケーキやクッキーなど製菓用として利用されています。また、たんぱく質含有量の多い強力粉と混ぜてパンをつくるとソフトな食感になります。
全粒粉 “全粒粉”は小麦全粒粉を指すことが多いです。通常の小麦粉は外皮、胚芽を取り除いて、胚乳のみを製粉しますが、全粒粉は小麦の外皮や胚芽をそのまま丸ごと挽いた粉。そのため、外皮や胚芽に含まれる食物繊維、ビタミン・ミネラルも含まれるので栄養価が高いです。
グラハム粉 グラハム粉は全粒粉の一種です。小麦を胚乳と表皮・胚芽に分けて、胚乳は普通の小麦粉と同じ細かさで挽き、表皮・胚芽部分は粗挽きにして、その両方を混ぜあわせたもの。このように、粗挽きが混ざっているためザラザラとした食感という特徴があります。グラハムという名前は、1829年にシルベスター・グラハム氏がこの小麦粉を発明したことに由来します。
小麦胚芽
(=胚芽小麦粉)
小麦の胚芽(小麦の2%)部分を挽いた粉。ビタミンB1、ビタミンEを豊富に含みます。一般に売られている小麦胚芽はローストしてあり、小麦粉に小麦胚芽をブレンドして作ったパンは香ばしく、胚芽のつぶつぶした食感が味わえます。
ふすま 小麦の外皮の部分(英語:bran)。ブランとも言われます。食物繊維、鉄分、マグネシウムなどのミネラルが多く含まれています。
グルテン 小麦粉に水を加えてこねると、弾力性と粘着性が出てきます。これが「グルテン」と呼ばれる小麦粉独自のタンパク質です。グルテンが膜をつくりパン酵母の発酵で生成した炭酸ガスによってパン生地が伸びて膨らみます。グルテンを形成するタンパク質の含有量は小麦の種類によって異なり、多い順に強力粉、中力粉、薄力粉などがあります。
セモリナ粉 セモリナ粉は、デュラム小麦を粗く挽いた粉です。パスタ、クスクスの原料になります。また、パン用に製粉したものもあり、黄色味を帯びたデュラム小麦の風味と歯切れの良い食感があります。
とうもろこし粉 とうもろこしの皮と胚芽を取り除き、胚乳のみを粉砕したもの。粉粒の大きいものから、コーングリッツ、コーンミール、コーンフラワーなどの区別がされています。薄く伸して焼いた南米のトルテイーヤ、かゆ状にして食べる北イタリアのポレンタ、米国南部のコーンブレッド(無発酵パン)などがあります。
ライ麦粉 ライ麦を挽いてできた粉で精製粉と全粒粉があります。ライ麦は小麦が生育しにくい冷涼地での栽培に適していて、主に北欧、ロシア、ドイツなどではポピュラーです。代表的なものに北欧のハパンリンプ、ロシアの黒パン、 ドイツのブンパニッケルなどがあります。小麦粉とタンパク質の性質が異なり、小麦粉のようにグルテンを形成するグルテニンを含ません。その代わりに、粘性の強いグロブリンを含むため、生地が膨らまずずっしりと重いパンになりますが、サワー種などで生地の酸度を高めると、弾力が高まり膨らみやすくなります。
ライ麦フレーク
(ライフレーク)
ライ麦を丸ごとプレスして押し麦状にしたもの。熱湯でやわらかくしたものを食パンの生地に混ぜ込んで使います。その他に、トッピング、あるいはグラノーラの材料として活用できます。
燕麦(えんばく)
=オート
オート、カラスムギともいいます。小麦に比べ形は細長い形状をしています。一般的に、そのままではなく、平たく押しつぶしたもの(オートミール)をパン生地に混ぜ込んだり、 トッピングとして利用されます。
米粉 精白米を粉砕して粉にしたもの。グルテンを加えない米粉パンは、小麦アレルギーの人でも食べられる。ただし、米粉パンの品質としてもふんわり膨らむように小麦グルテンが添加されたもので作られることが多いです。米粉パンは発酵時間が短くて作れ、もちもちとした食感などの特徴があります。
内麦 国産小麦のこと。輸入小麦(外麦)に対しての言葉。日本国内で生産される小麦のほとんどは中力粉タイプで麺用に適しています。このようなたんぱく質含有量が少ない国産小麦でつくるパンは、たんぱく質含有が強力粉より少ないので、どちらかというと内麦のパンは膨らみも少ないですが、もちもち感があります。
高たんぱく粉 通常の強力粉よりたんぱく質含有量が多く、強靭な生地を形成する粉。

イースト(パン酵母)

イースト(パン酵母)は材料に含まれる糖質を栄養分として、炭酸ガス、エステルなどの香気成分を生成します。これらがパンがふっくらとして、焼き上がったときの香り、食感、風味などに関わっています。

生イースト パン用の酵母を純粋培養して圧縮したもの。1gあたり約100億個の酵母が含まれています。粘土に似た質感で水分量が約70%と多いので冷蔵庫で保存し鮮度保持に注意が必要です。使用するときは、手でほぐして直接粉に加えるか、仕込み水の一部に溶かしてから使います。また、生イーストは、砂糖などが多く配合された菓子パン生地に使われることが多いです。
ドライイースト 生イーストを低温で乾燥させて顆粒にしたもの。バンの風味がよくなり、バゲットなどのリーン系のパンに使われることが多く、生イーストより保存性に優れます。ドライイーストの使用量は生イーストの約1/2が目安です。ドライイーストは酵母が仮眠した状態にあるため、使う前に35~40℃のぬるま湯で水分を吸収させると同時に、発酵力を復活させる必要があります。生イースト、インスタントドライイーストにはないパンの香り、風味が芳醇になるなどの特徴があります。
インスタント
ドライイースト
ドライイーストの一種で予備発酵がいらないため、直接、粉に混ぜて使うことができます。短時間で発酵するので家庭でのパンづくりでも使われています。インスタントドライイーストの使用量は生イーストの1/3程度です。ドライイーストより発酵力が強く、またパンの香り、風味が軽く、あっさりとしたものになります。

砂糖

パンに甘みを加えたり、焼き色をつける働きがあります。また、パン酵母の栄養分となって発酵を促す役割もあります。製法によって種類を大別すると、分蜜糖と含蜜糖の2種あります。分蜜糖を使いやすい形に加工したものを加工糖といい、角砂糖、粉砂糖、氷砂糖などがあります。含蜜糖には、黒砂糖と和三盆糖があります。

上白糖 水に溶けやすく保湿性があります。パン生地がしっとりとソフトになるため、バン、菓子、料理へと万能に使えます。
グラニュー糖 結晶状でさらさらとしています。あっさりとクセのない上品な甘みで、素材の香りや風味を損ねずに、純粋に甘みだけをつけられるため、ジャムや菓子などに使われます。
三温糖 製造過程で数回加熱して結晶化させているので薄茶色をしています。この色からミネラルが多そうなイメージですが上白糖とあまり変わりません。
粉糖 グラニュー糖を微粉末にしたもの。きめが細かいため菓子製品の仕上げに振りかけたり、アイシングに用います。
ハチミツ 蜜源となる植物はれんげ、アカシアなどが一般的ですが、ラベンダーなどのハーブ系、蕎麦など種類に色、味、香りなどの特徴があります。パンをしっとり仕上げたり、ハチミツ特有の甘みを加えたい時に使います。
モルト 麦芽エキスのことで粉末タイプとシロップタイプがあります。フランスパンなどを作る際に使用されます。フランスパンのように砂糖が入らないパンにモルトを入れることで、パン酵母の栄養源になって発酵を促進させます。また、色艶のよいクラストに焼き上がります。

油脂

バターやマーガリン、ショートニングなどの油脂は、パン生地の伸びをよくする働きがあり、パンにボリュームがでます。また、バターやオリーブオイルなどは、コクを与えるだけでなく、香りや独特の風味を出すことができます。

バター バターには、乳酸菌発酵させたクリームから作る発酵バターと、乳酸菌発酵させないクリームから作る非発酵バターがあります。日本では後者が一般的ですが、ヨーロツパでは発酵バターが主流です。また、それぞれに加塩・無塩タイプがあり、製パンには無塩タイプが使われます。パン生地にバターを加えることで、バター特有のコクのある香りと風味がでるためクロワッサン、ブリオッシュには欠かせません。
ショートニング 無味無臭の加工油脂なので、パンに香りや風味などを与えたくない場合に向いています。また、サクッと軽い食感のパンになります。
マーガリン 原料が植物性油脂なので、バターのようなコクはありませんが、あっさりしています。バターを使うと味がやや重たくなるので、パン生地をやや軽く仕上げたい時に使用したり、バターと混ぜて使ったりしています。
ラード 精製した豚の脂を原料とした食用油脂です。100%豚脂の純製ラードと、豚脂に牛脂やパーム油などを加えた調製ラードの2種があります。バター、マーガリンにはないラードの独特な風味や生地を重めに仕上げたいパンに使いたい油脂です。
オリーブオイル オリーブの果実を絞ったもの。香り、風味があるため、フォカッチャなどイタリアのパンに使われます。
サラダ油 製パンに使用すると、オリーブオイルよリクセがなく仕上がります。
折り込み油脂
(ロールイン油脂)
デニッシュ、クロワッサン、パイなどに用いる板状に成型された油脂です。伸した生地に包み込み、それを折りたたんで伸す作業を繰り返すことで、生地に層をつくり食べた時のサクサク感を出します。

乳・乳製品

牛乳をはじめとした乳製品はパン生地に水分や風味を与え、パンの表面にきれいな焼き色をつける役割があります。生地の仕込みに牛乳や生クリームを入れるほか、チーズなどは生地に混ぜ込んだり、トッピングに使います。

牛乳 水の代わりに牛乳を使うと、生地に牛乳の風味や香りを与えますが、生地が締まってしまうので注意しなければなりません。牛乳には無脂固形分や乳脂肪分が含まれているため、牛乳と仕込み水の配合量を調整する必要があります。
脱脂粉乳 牛乳から脂肪分を除いて濃縮し粉末にしたもの。スキムミルクともいいます。粉末なので長期保存できるため、製パンにおいては牛乳よりも使用頻度は高いです。配合量は牛乳を使用する場合の約10%が目安となります。
練乳 牛乳、脱脂乳を濃縮したもの。牛乳を濃縮した「エバミルク(無糖タイプ)」と、牛乳に砂糖を加えたものを濃縮した「コンデンスミルク(加糖タイプ)」があります。練乳特有の香り、風味を活かしたパンづくりができます。
生クリーム 生クリームとは俗称で、正式には「クリーム」といいます。乳脂肪分18%以上の液状のもので乳製品の一種です。乳脂肪が高いため、しっとり感がでて乳由来の風味豊かに仕上がります。
ヨーグルト 牛乳を乳酸菌で発酵させたもの。製パンでは、主にサワー種の生地に爽やかな酸味を加えるために、プレーンタイプ(砂糖や香料などを添加していないもの)が使われることがあります。また、「ヨーグルト種」として発酵種の種起こしにも使われます。
チーズ 製パンでは、チーズ特有の風味を活かすように、トッピングやフイリングに用いられます。使用目的によって、シュレッド、ダイスカット、粉末状、フィリング状など様々な形状があります。

粉のタンパク質からグルテンを形成するために必要なのが水。イーストの活性を促すため、季節により水温を調節し、イースト菌が死減する60℃以上にならないようにします。さらに、弱酸性の水を使うのがベスト。

生地の中のグルテンを引き締め、コシを強くします。また、パンの味を引き締めて風味もよくします。塩を入れないで作ると生地がべたついて発酵しすぎた状態になります。

ドライフルーツ

生地に混ぜ込むことで味や香り、歯ごたえにバリエーションをつけます。製パンに使用するドライフルーツはそのまま、水で戻したり、またはシロップ・ワインで煮るなど、乾燥度合いに応じて前処理を行います。

レーズン 千しぶどう。レーズンは種類が豊富ですが、生産量の多いカリフオルニア・レーズンが一般的です。そのほか、「ザンテ・カランツ(小粒で黒紫色)」、「サルタナ(やわらかくて淡い茶色)」などがあります。製パンでは、前処理として水洗い・水切りを行った後、少なくても一晩放置して、水分を内部へ浸透させたものを使用します。
デーツ ナツメヤシの果実。とても甘く、栄養価が高い。 ドライフルーツとして製パン・製菓に利用されます。

ナッツ

ナッツはパンの表面にのせたりして、飾りつけにおすすめです。

カシューナッツ 歯触りが柔らかく、やさしい甘みがあります。ウルシ科の植物なので、生食は口を痛めるため必ず煎ってから食べます。
ヘーゼルナッツ 地中海や黒海沿岸などで栽培されており、種子を食用とします。煎って渋皮を除き、ホールもしくは粗く砕いて製パン・製菓に利用します。チョコレートとの相性が良いです。
マカダミアナッツ 殻を除き、煎って粗く砕いたものを製パン、製菓に利用します。淡白な味で歯ごたえがもろく、しっとりしています。
栗は大きく分けて、日本栗、中国栗、ヨーロッパ栗があります。栗を粉末状にして小麦粉の代わりにパンでも使えます。小麦粉のパンよりほのかな甘みがあります。
くるみ 殻果の内部の仁を食用とします。ローストすることで香ばしい食感となり、コクのある味になります。殻付き、二つ割り、四つ割り、細かく砕いたものなど、様々な形状があります。
ピーカンナッツ ペカンナッツともいいます。くるみようにひだがありますが細長い形をしています。 くるみよりもまろやかな味で渋みが少ないです。
ピスタチオナッツ カットして洋菓子のトッピングにすると緑色で彩りがきれいです。また、ペーストにしたものを製パン、製菓の材料として使用することもあります。
ココナッツ 未熟な果実の種子の中にある胚乳(液体)は、 ココナッツジュースになります。また、果実が熟して乳白色に固まった胚乳を削り、絞ったものがココナッツミルクです。それを乾燥して刻んだものがココナッツフレーク、ココナッツスレッドになります。焼き菓子に入れたり、飾りに使われます。

種実(シード)

シードはパンの表面にのせたりして、飾りつけにおすすめです。

南瓜の種 白い殻に覆われた種子で、殻を取った状態(緑色のむきみ)でパンのトッピングなどに使われます。ローストすることで平たい種が膨らみ、カリッとした食感となります。素朴な風味が特徴です。
ひまわりの種 殻をむいた子葉部分が食用となります。ドイツのライ麦パン『ゾンネンブルーメンブロート』ではトッピングに使用されます。
けしのみ
(芥子の実)
ごまに似た香味があります。あんパン(こしあん)、カイザーゼンメルなどの飾りに使われます。
ごま 煎ることで芳香が増します。パン生地に練り込むこともあれば、トッピングとしても使われます。
キャラウェイ
シード
完熟した実を丸ごと、もしくは粗挽きしたものが香辛料として用いられます。クミンと外観が似ていますが、混同しないようにしましょう。爽やかな芳香があり肉類の臭み消しとしても使われます。穏やかな甘みと少しほろ苦さがあります。パンではライ麦パンやザルツシュタンゲンに用いられます。また、キャラウェイは駆風剤としての効能をもつとされ、ヨーロッパ(ドイツ、オーストリアなど)では消化を助けるために料理に用いることもあるようです。

その他

改良剤 パン生地の性格や風味を改良する添加物の総称。製パン改良剤、品質改良剤、生地改良剤ともいいます。単独の添加物ではなく、複数の添加物が混ぜ合わさって、複合的な影響をパンに与えます。さらにその中でも目的が特化したものとして、還元剤、乳化剤、酸化剤、酵素剤、pH調整剤などがあります。イーストフードの別名のようにいわれる場合がありますが、食品衛生法の表示規定では両者は区別されています。
乳化剤 食品の乳化を促す食品添加物の総称。グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど。「乳化」とは水と油のように通常は分離するものが混じり合うことをいいます。乳化剤は、一つの分子の中に、水を引き寄せる「親水基」と油を引き寄せる「親油基」を併せ持つため、混ぜ合わすことができます。製パンでは、パンのソフト化、老化の遅延などの目的で使用されます。
ビタミンC L-アスコルビン駿、VCともいいます。食品添加物で酸化剤・膨張剤の一種で小麦粉のグルテンの構造を強める働きがあり、生地に弾力を与え、生地のガス保持力を高めて、軽さを持ったボリュームのあるパンに仕上げます。
ラム酒 サトウキビの汁、蜂蜜を発酵、蒸留して造る蒸留酒。パン生地に練り込むドライフルーツをラム酒で漬けることでドライフルーツが柔らかくなり風味もつきます。
パン生地に加えると生地を柔らかくしたり、味や風味にコクがでます。粉に対して少なくても10%以上の卵を加えることにより風味が感じられます。また、焼成前に生地の表面に卵液を塗ることにより艶出しの効果があります。製パン材料として、冷束、冷蔵、乾燥の加工を施した加工卵は、貯蔵や運搬などの利便性が高いです。
ピール 柑橘類の果皮の砂糖漬け。果実の中身を取り出して、果皮だけをシロップなどでで煮詰め乾燥させたものです。ピールの風味を活かしたジャムにマーマレードがあります。パン生地に加えると、ピールの柑橘系のさわやかな香りを楽しむことができます。
マジパン アーモンドプードル(粉末)と砂糖からできた菓子。日本でいう餡にも似た食感で、アーモンドの独特の香りとコクがあります。マジパンの主原料で「マジパンローマッセ(アーモンド、砂糖を混ぜてできたペースト)」と呼ばれ、様々な砂糖の割合のものがあります。マジパン飾りとして使われるだけでなく、、ドイツのクリスマス菓子“シュトレン”のフィリングとしても用いられます。
ラウゲン 苛性ソーダ(アルカリ溶液)のことで、ラオゲンともいいます。ドイツのブレッツェルの製造では、ホイロ後の生地をラウゲンにつけて焼成する際に使われます。そうすることで生地表面が茶褐色の焼き色になり、独特の風味、食感が生まれます。ラウゲン処理に使うアルカリ液は3%溶液です。ゴム手袋とめがねを着用し、液が皮膚につかないように作業する必要があります。
重曹 膨張力が強く、においと苦味があるので控えめに使用します。ベーキングソーダ、炭酸水素ナトリウムともいいます。
ベーキング
パウダー
ふくらし粉とも呼ばれています。重曹にみょうばんやデンブンを加えて使いやすくした膨張剤です。

パン屋さんが使う道具・機械

シンペル 生地を発酵させる時に入れる籐製の籠。円形、楕円形など形は様々あります。内側に布を張ったものもあり、内側に打ち粉を振ってから生地を入れて使います。
バヌトン フランスの大型パン生地を発酵させる時に入れる籠。打ち粉を振ってから生地を入れる。生地の乾燥を防ぐため、内側に布を張ってあるものもある。形は、円形、楕円形など。ドイツのシンペルに相当する。
スケッパー パン生地を手で分割するための道具です。片手に収まるサイズで、薄くて四角い。作業台に付着した生地をかき取るのにも用います。ステンレス製が一般的です。
天板 オーブンに入れて、生地を焼くときに使う四角いプレートのこと。
ピケローラー 生地が均―に膨らむよう、生地から余分なガスを逃がすための穴を開ける器具です。ローラーに突起があり、それで生地をならすと穴が開く。主にパイ生地や、ライ麦パン生地などに用います。
縦型ミキサー ミキサーの撹拌子が垂直についているミキサー。撹拌子はフック状が一般的です。小型のミキサーにこのタイプが多いです。
横型ミキサー 生地を撹拌する撹拌子が、水平についているミキサー。主に大型のパンエ場で使用されています。
スパイラル
ミキサー
縦型ミキサーで撹拌子が螺旋状(らせんじょう)になっているミキサーのこと。回転速度が比較的速く、短時間で生地の伸展性を強めるのに適したミキサーが多く、ノータイム法の生地や冷凍生地などのミキシングに向いています。
発酵室 第一次発酵室ともいいます。外部の温度に影響されることなく、温度・湿度を発酵に最適な状態に調節できる空間です。
ディバイダー 生地を分割する機械のこと。生地へのダメージが少ないストレスフリーディバイダーも登場しています。
ラウンダー パン生地の「丸め」の作業をする機械。分割された生地の表面を張らせて、形を球状に整えます。
プルファー 分割・丸めの後のベンチタイムの際に生地を置く発酵室のこと。ホイロともいいます。
モルダー パン生地を最終的な形に整える成形機のこと。生地を薄く伸ばし広げ、転がして巻き、円筒形に整えて、継ぎ目を閉じます。
リターダー 冷蔵庫のこと。冷凍生地の解凍、生地冷蔵法などに使われます。
リバースシーター ローラーで薄く生地を伸す機械。デニッシュ・ペストリーやクロワッサンのように、生地にバターの折り込み作業する際に使われます。

パン屋・パンの呼び名

ブーランジェリー フランス語でBoulangene(ブーランジェリー)はパン屋の意味。フランスでは、店で生地から焼成の工程をしていないと「ブーランジェリー(パン屋)」と店名に付けることは出来ません。
ベッカライ ドイツ語でBackerei(ベッカライ)」はパン屋という意味。ちなみに、ドイツではパンのマイスター資格を持つ人がパン屋の開業を許されています。
インストア
ベーカリー
スーパーマーケットなどの中にパンエ房を併設した店のことで、オーブンフレッシュベーカリーともいいます。生地作りから焼成まで全ての製パン工程を行うスクラッチベーカリーと、工場で作られた冷凍生地を用いて、解凍・焼成するベイクオフベーカリーがあります。
リテール
ベーカリー
パン業界では一般的に、同じ店内で製造と販売をしているお店を「リテールベーカリー」と呼びます。
ハース(直焼き) 型や天板を使わず、窯の焼き床の上に直接生地を置いて焼くこと。ハースとは「火床」のことです。この方法で焼いたパンを「ハースブレッド(直焼きパン)」といいます。
カスクルート バゲットなど棒状のフランスパンに、チーズ、ハムをサンドしたもの。
クロックムッシュ/クロックマダム フランスで食べられているホットサンドの一種です。ハム、チーズをはさんだパンの両面をバターで焼いたもので、焼き上がりに上面にベシャメルソースをかけるのが一般的です。カフェなどで軽食メニューとして提供されています。ちなみに、クロックムッシュの上面に目玉焼きを盛り付けたものをクロックマダムと言います。
タルティーヌ フランス語で、スライスしたパンにバターなどを『塗る』という意味の”Tartiner(タルティネ)”から来ています。つまり、フランス式オープンサンドで、縦割りに切ったフランスパンにバター、ジャム、蜂蜜などを塗ったシンプルなものから色んな具材をのせたボリュームあるものまで、その時のシーンに合わせて準備できます。
パン・ペルデュ pain perdu(パン・ペルデュ)、フレンチトーストのことです。
クイックブレッド パン酵母を使わないで、ベーキングパウダーや重曹などの膨張剤を使って膨らましたものです。蒸しパン、イギリスの「スコーン」、アメリカの「コーンブレッド」などがあり、発酵の過程がないため手早く出来上がります。
テーブルロール 食事の時に料理と一緒に提供される小型パンのことです。バターロールのようなソフト系の他にも、カイザーゼンメルのようなハード系の小型パンもテーブルロールの仲間になります。バターロ―ルは卵、油脂などの風味とソフトで口溶けの良い食感があり、日本人にポピュラーなパンです。
デニッシュ・
ペストリー
英語で「デンマークの菓子」という意味ですが、デンマークでは「ヴィエナブロー」ウィーンのパンと呼ばれており、発祥はウィーンとも言われています。発酵した生地にバターを折り込まれ層になっているため、食べたときのサクサクとした軽い食感が楽しめます。カスタードクリームやシロップで似たフルーツなどをフィリングとして使われています。
ヴィエノワズリー フランス語の「ウイーンの」という語源からきていますが、一般に、バターや卵、牛乳、砂糖などの副材料がリッチな配合のバンのことをさしています。例えば、クロワッサン、ブリオッシュなどです。オーストリアのウイーンから伝ってフランスで根付いたパンのことです。
ワンローフ 日本では「ワンローフ」はワンローフ型で400gくらいの生地を焼いたパン(食パン)をさします。アメリカでは「1つのパン」という意味です。

【参考文献】
パンの事典(旭屋出版)
パンの図鑑(毎日コミュニケーションズ)
パン入門(日本食糧新聞社)
知識ゼロからのパン入門(幻冬舎)